八剣 うめ

八剣 うめ - やつるぎ うめ –

「じゃあもう死ねばいいです」

 土地の神社に生まれたお嬢様である。セラフィエルが襲来したとき、まだ力には目覚めていない。
巫女たちの中に、特異な力に目覚める者がいるらしいことは、知っていた。けれどもそれは自分には無縁の話だと思っていた。そういう巫女たちが「阿羅耶識」 という組織で団結しているということも知っていたし、彼女の家の神社もそこに属してはいた。けれども、霊能者を輩出していないことで、彼女の神社はとても 軽く扱われていた。
セラフィエルの攻撃で、街は大きな被害を受けた。砲撃による破壊があっただけでなく、何らかの理由で、能力者たちが一時的な錯乱をきたした。ダークロアの獣人や、極星帝国の兵士が暴動を起こし始めていた。
避難中に、そうした者たちに襲われた。みんな逃げだし、自分だけが取り残された。恐怖に震えていたそのとき、極星剣士の死体が握っていた魔剣が、急に彼女 に反応した。魔剣はひとりでに彼女の手に収まり、その瞬間、彼女は能力に目覚めた。
敵をまたたく間に切り伏せてしまうと、万能感で高揚した。今や彼女は、自分の身を自分で守り、自分の敵を滅ぼすことができる。
そう。刃向かう者は、みんな切り伏せてしまえばいい。