真代 詠

真代 詠 - ましろ よみ –

「お兄ちゃんと一緒にいたかったよ。
 でも、どうしようもないの。さよなら」

 セラフィエルと呼ばれるあの天使が地上に降りたあの日から、自分の中で何かが変わった。自分という存在がつくりかわるような感じ。繭の中で、さなぎが成虫へと変化していくようなイメージ。
自分が何者であるのかが、うすうすわかりはじめた。そのことをお兄ちゃんに伝えようと思ったけれど、なぜかそれができなかった。まるで、自分の中にいる別の自分に禁止されているようだった。
いえ、そうじゃないかもしれない――。
それを告げるのが恐くて、わたしが言い出せなかっただけかもしれない。
もうすぐお迎えがやってきて、わたしはいなくなる。お兄ちゃんはきっと、とっても悲しむだろうな。けどそれは、どうしようもないことなのです。ごめんなさい。